before story

関東事変の発案者である生徒が、関東事変が起こる前の話を書いてくれました!

これを読むことで、文化祭当日、もっと1100の展示を楽しむことができるかも!?

それでは物語をお楽しみください…!


関東事変~首都取得しない?~

Before Story「関東前夜」


それは、セミですらうだるような暑さの日だった。


「大体、何でこんなところでやってるの?」

ふてぶてしそうに栃木県が言った。

「仕方ないですよ。みんなが楽に集まれる場所は、ここしか無い

みたいなんですから。」

茨城県がたしなめた。

「だからってさ東京で、東京潰す話する?」

「うわぁマジレスかよ。無いわ~」

ここで突っかかるのは、やはり群馬県しか居ない。

「それは、遥々出てくる君たち北関東勢でも迷わないであろうかつ

交通の便が良い文京区東京ドーム近くにしたんだぞ。」

東京ドームってそこまですぐ行ける所じゃないよな。と言いたかったが余りに

千葉県が得意そうに語るので言葉を飲んだ。

まあ、浦安と言わないだけまだましか。

「静かにしたまえ。」

神奈川県は一言だけ発しすぐにカバンの中の水素水を手に取った。

何故に水素水?それ格好良いと思ってるの?気になる事が芋づる式に出てきたがそのような疑問は埼玉県の一言でかき消された。

「早く決めちゃいましょうよ。皆さんお忙しいでしょ。」

ニコニコと笑顔を絶やさないその顔は、奥にある筆舌に尽くし難い黒い何かを

抱えているようにも見える。

「ということなので、よろしくお願いします。」

埼玉県が私のほうに目くばせをした。その笑顔は崩れない。

「了解しました。では、皆さんおそろいのようなので始めさせていただきます。

今回の会議が無事に進めば最後の会議になり実際に計画を遂行するという形になりますがよろしいでしょうか?」

私が定型文のように淡々と語るその言葉に

「異議なし。」

と神奈川県が発したのを皮切りに次々と他の県も返答をした。

「では、前回までの話を簡単にまとめさせていただきます。」

片手では、支えきれないほどの議事録を手に取り開いた。

「まず、皆さんの共通目標としては、東京から首都を奪うということに

なります。」

私は、どれだけ荒唐無稽なことを言葉に発しているのだろう。

しかし、大真面目にこの人たちは、話しているんだ。この事を。

「首都を奪ってからのことについてですが、今回の作戦への貢献度が最も高い県

を次の首都とします。そして、その決定事項に関しては、必ず従うということになります。裏切り行為は、禁止です。」

全員の顔が陰った。共通目標は、あれど見ている方向は全員違う。

そのようなルールは、ただの足かせ。

自由を奪う。

足かせは、外すのが一番良い。

一呼吸置きまた話し始めた。

「各県の担当についてですが、神奈川県さんは、便宜上指揮官。千葉県さんは、物品などを運ぶ整備班。茨城県さんは、首都取得の為の武器を作る技術班。

埼玉県さんは、県の隣接数が多いことを活かして、通信班。群馬県さんは、

温泉などを活かした医療班。栃木県さんは……えーっと…あれ…」

「無かったよなぁ。」

悪童みたいな笑顔で群馬県は言った。

「可哀そうだから止めてあげてください。大丈夫ですよ‼栃木県さん。」

その慰めが傷口に塩を塗っていることに茨城県は、気づかない。

「今作りましょう。」

栃木県が机を叩いて跳ね上がるようにして言った。

「じゃ、広報班とか?」

千葉県は、あくびをしながら興味無さそうに言った。

「広報といってもねぇ。自ら手の内晒す訳にもいかないし、もっと

戦い感がある名前が良いです。」

「天津飯。」

急にボケをぶちかました神奈川県に他の全員がたじろいだ。

横浜にある中華街感を名前に入れたかったのだろうか。

本当に自分好きだな。ナルシスト過ぎ。

その言葉を、私は、またしても飲んだ。前回よりも早く飲んだ。

「作戦班とかどうですか。」

埼玉県が栃木県の目をしっかりと見て言った。

「良いですね、良いですね。それが、良いです!」

栃木県は、嬉しそうに言った。

だが、私は、作戦班という役職なんかよりも一瞬で最適解を見つけ他県を

懐柔してしまう埼玉県の怖さを身をもって体感した事に気を取られていた。

「では、栃木県さんは作戦班ということで。」

咳払いをした後に言った。

「これでひとまず前回までのまとめは、終わりました。次に

今日の議題ですが作戦決行日九月七日の具体的な計画作成です。」

「まず、最初に攻撃するところ決めないとな。」

神奈川県がいよいよとばかりにその言葉を発した。

「やっぱり東京タワーですよね。あそこが東京のシンボルですから」

茨城県が嬉々とした顔で言った。その目には、狂気が見え隠れしている。

その話を聞いた群馬県と栃木県の表情を見るに賛成のように見える。

自分と似ている人を嫌いになるとは、よく言ったものだ。

「異議なし。」

神奈川県と埼玉県は、少し考えてから賛同した。理由は、私には分からない。

「東京タワーを攻撃して破壊するって何だか格好良くないですか。

こう、何といえばよいのか…反撃の狼煙みたいで。」

千葉県が何とも言い難い言葉を言ったことで、この話は、まとまった。

「皆さん賛成ということなので、最初の攻撃地点として東京タワーを

設定します。次に攻撃方法なんですが。」

「それは、技術班茨城にお任せください。丁度良いのがあるんです。」

茨城県が名乗り出た。

「何やるのか教えてよ。先陣切るのが自分の県だから。」

群馬県が茨城県を見つめた。

最初は、頑なだったが根負けしたのか茨城県が口を開いた。

「おにぎり。」

そう、ポツンとつぶやいた。

「おにぎり?」

「工場。」

「工場?」

「コンビニ。」

「コンビニ?」

生産性の無い会話が繰り広げられた。

「これ以上は言えません。」

「何で?」

千葉県が空気を読まずに聞いた。

「その色々問題がありまして…」

「危ないのは、嫌だよ。」

至極真っ当なことを群馬県が言った。

「いや、危険というよりコンプライア…」

「もう、言わなくて良い。」

神奈川県が制止した。

「自分達がこれからやるのは、立派な反逆行為だ。下手したら県自体

無くなる可能性すらある。でも、やるしかない。そうだろう。だからこそ、

皆を信頼することが大切なんだ。だから、私は、茨城県を信じる。」

神奈川県が人気な理由が分かった気がした。その圧倒的包容力だ。

皆を導く様は、武士を奮い立たせ鎌倉幕府を守った北条政子のようだった。

いや、見た事ないから分からないけど。まぁ、恐らくそう。

「で、攻撃した後、共同声明を出しますよね。」

全く声色を変えず埼玉県が言った。

「そうしたほうが、良いかと思われます。」

私は、そう伝えた。そうすると、急に雰囲気が変わり不穏な風がそこに流れしばらくしてから何処かの県が口を開いた。

「文言はもちろん。」

「「「「「「私が、首都を取得します。」」」」」」

「神奈川県。」

「千葉県。」

「埼玉県。」

「群馬県。」

「栃木県。」

「茨城県。」

各県は、己の欲望をむき出しにしつつも協力をして東京に戦いを挑む。

その様相は、醜くも美しかった。

相反する思いを抱いたとき千葉県がその思考を遮るように

「おそらくここからは、決めなくても大丈夫だと思うからさ

今日は、解散しよう。皆さんお忙しいでしょ。」

と、どこかで聞いたような言葉を発しこの会議は終わった。

「そうしよう。では、」

と神奈川県が席を立った。

「じゃ、自分もお先失礼します。」

埼玉県は、最後まで笑顔を崩さず帰っていった。

「なんで付いてくるんだよ。」

「仕方ないだろ。同じ方向なんだから。」

「まあまあ。ケンカしないの。」

北関東の三県は、ガヤガヤしながら出て行った。

てか、もうあの三県仲良しじゃね。そんな言葉を私は、また(以下略)。

そしてこの会議室には、私と千葉県だけが残った。

「今日は、ありがとうございました。何か御迷惑とかおかけしてませんか?」

千葉県が意外過ぎる一言を発した。正直空気が読めない人だったと思っていた。

「別に大丈夫でしたけど。」

「なら、良かったです。他の皆にも迷惑掛けて無かったら良いけど…」

千葉県は、弱弱しく言った。それは、先程まであんなに激しく話していた

姿とは、似ても似つかぬものだった。

もしかしたら千葉県は、ただ…

いや、詮索は、やめておこう。無粋だ。

千葉県は、会釈を私にしてから足早にこの会議室から出て行った。

そして、私一人になった。

私は、あくまで中立。

関東6県の味方では無い。ましてや、東京の味方でもない。

私には、敵も味方もいない。そこに他人が居るだけ。

ただ、全てを受け入れ送り出す。そしてそれを記していく。

それだけだ。

この話の結末がどうなるかは分からない。

東京が首都を守り抜くかもしれないし

関東6県のどこかが首都になるのかもしれない。

もしかしたら関東地方以外もこの作戦に名乗り出るのかもしれない。

それこそ〈神のみぞしる〉だろう。

帰り支度を済ませ、私は、外へ出た。

すると、あんなにやかましく鳴いていたセミの声が無くなり

代わりに声をかき消すくらいの量の雨が降りしきり周りを暗くしていた。

これは、何かの暗示なのだろうか。

これからの関東を、そして日本の行く末を心配しているのだろうか。

私は、そんな雨に微笑みを向け歩き出した。

そして、壊されるのを待つ東京タワーは、

寂しそうに光っている

しかし

力強く、力強く、私の影を映していた。

                                               終

この話の続きは、

1100presents「関東事変~首都取得しない?~」@A-4

で体験してください。


※この話は、関東事変の世界観を知っていただき追体験をしてもらい

話の中に入って楽しんで欲しいという思いから作られたものです。

この話は、フィクションです。実際の人物、団体とは、一切関係ありません。



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